『祖国より一人の友を』海老坂武(岩波書店)

祖国より一人の友を
祖国より一人の友を
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海老坂 武
岩波書店 (2007/09)
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自伝三部作の三冊目。「自伝」だから当たりまえだが、この本も著者が当時何をし何を考えていたかということばかりが書いてある。しかし、著者の位置自体が興味深いものなので、そうした細々した記述がそれなりに面白い。人物や作品についてあれこれ率直な評価をくだしているのも、嫌味を感じずに読める。「ポストモダン」の問題については、いずれ誰かがきちんと分析する必要があるのかもしれない。ちなみに私自身は、90年代前半に10年遅れで「ポストモダン」文化に興味を持つようになったわけだが、「ポストモダン」と並んでマルクス主義やら第三世界主義やらも同時に興味の対象だった。サルトルに対してはほとんど興味を持たなかったが、海老坂武の名もファノンの訳者として高校生の私の中にはしっかり刻み込まれていて、一橋大学に入ったらフランス語を習おうと勝手に決めていたくらいだった(合格しなかったのでその機会はなかったが)。今思うと、私の興味の持ち方は歴史的文脈がメチャクチャである。しかし、それにはそれなりの意味があり、そしてそれを可能にしたのは古本文化だったと思う。この本とは直接関係ないが、読んでいてそんなことを思った。