『声の狩人』開高健(光文社文庫)

声の狩人  開高健ルポルタージュ選集 (光文社文庫)
開高 健
光文社 (2008/01/10)
売り上げランキング: 98391
元本は1962年らしい。当時の著者は現在の私とほぼ同い年。そう思うと悔しい。「芥川賞作家」というそれなりのステータスとはいえ驚くほどの行動力であり、結構な語学力であり、さすがの表現力である。今の私ではどれも歯が立たない。「ルポルタージュ」としては、観察と創作と感想が入り混じり、重要な政治的論点についても深く解明できる文体になっていない。「文学」ということで肝心なことから逃げているとも思える。本多勝一が「ルポ」の方法論にこだわった理由も開高を読んでみて逆に少しわかった。しかしそれでも、開高は見るべきところは見ていると思う。彼の「社会派」の内実について、左右を問わず十分に読解されてこなかったのではないか。