『下山事件』森達也(新潮文庫)

下山事件(シモヤマ・ケース) (新潮文庫)
森 達也
新潮社 (2006/10)
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そういうわけで、佐藤一の『下山事件全研究』を読んだ後だと、こうした謀略論はなんとも貧弱。少なくとも下山事件に関して言えば、右翼が自己顕示で吹いたホラを真に受けて話が錯綜しているだけなのではないか。下山事件自体ではなく、謀略論が生き延びつづけていることの方がよっぽど「謎」だ。ただ本書について言えば、何を題材にしても「センチメンタルな自分」にしか回帰しない森達也の特性が、謀略論への深入りを結果的に抑制していて、近年の謀略本の舞台裏を暴露している点も含めて、相対的に好印象(あくまで相対的にだが)。