『政治暴力と想像力』鈴木道彦(現代評論社)

政治暴力と想像力―鈴木道彦評論集 (1970年)
鈴木 道彦
現代評論社
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内なるナショナリズムを問う、というのが本書の一つの軸となっており、その姿勢は見習いたいものの、それが何に由来する問題意識なのかはこの本だけでははっきりしない。一方で、それと密接に絡み合ったものとして、暴力によって支配された者がその暴力を対抗のために用いることを是とする論理が存在する。これはファノン経由のものだが、この論理が持ってしまう危険性について、著者は十分な注意を払っていない。「あとがき」でいくらか留保しているものの、この暴力をめぐる点の反省なのかどうかは必ずしも明確ではない。「サルトリアン」の60年代について、もう少し追いかけてみる必要がありそうだ。