『真珠湾〈奇襲〉論争』須藤眞志(講談社選書メチエ)

『諸君!』に書いた論文などが元になっているようだが、日米戦争開戦をめぐる謀略論を否定していて結構面白い。「ABCD包囲網」などの「自衛戦争史観」の粗雑さもよくわかる。また、イデオロギーの左右を問わない、謀略論の手口も興味深い。基本的に、1940年前後の日本政治・外交の浅薄さが開戦および敗戦を不可避にしたというのが著者の理解。それが主要因だと言えるかどうかはともかく、その「失敗」は決して過去の問題ではないように思える。