『「若者論」を疑え!』後藤智和(宝島社新書)

全面的に批判したいとは思わない。自分より全然若く、専門も違うのに社会学の知見をちゃんと整理しようとしていて、基本的には偉いと思う。しかし、どうしても違和感が残る。データに反した主張、怪しげな議論、それらがおかしいというのは「そりゃそうだ」とは思うが、そんなに低い山に登ってもなぁと感じる。何より、「若者」が変化したのかという大枠の問題に対して特に見解を示してないのは激しく物足りない。巻頭の対談で本田由紀が適切に指摘したように、この「もぐら叩き」の先に何があるのか曖昧である(ただし本田が「権力や資本」の陰謀を対置するのもあんまりであろう)。瑣末なことだが、批判するのに固有名詞を註でだけ出すというのは意味不明だし、元号を使う方が「公的」だと勘違いしているのもやめてほしい。