『暴力と反権力の論理』野村修(せりか書房)

暴力と反権力の論理 (1969年)
野村 修
せりか書房
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「暴力学生」という権力側のキャンペーンと対峙するときに、「反暴力」という概念が「こちら側」の旗印となる。「反暴力」とは、国家=法=暴力の廃棄、つまり「非暴力」を志向することだという。著者はこの「反暴力」の中に、既存の「暴力」のモメントが含まれることに気づいており、それに警戒してはいる。しかしそれを「反暴力」=「非暴力」の「志向性」だけで乗り切るかのような議論をしていて、運動の「形態」の問題として考察されていない。その結果、実際上の暴力への歯止めとしては有効ではなかったように思われる。むしろ、「反暴力」を正当化する部分に重きを置くことで、そのリミッターを外してしまったのではないか。