『高度成長』武田晴人(岩波新書)

社会史的な高度成長論を期待していたのだが、経済史と政治史が中心でその意味ではオーソドックスな通史。しかし逆に、普段あまり関心を持ってなかったこともあって、たとえば70年代以降の政治史など勉強になった。本書を読んで改めて思うのは、高度成長後の軟着陸に(一応)成功してしまったがために、きちんとした方向転換をしそびれたまま現在に至ってしまったのではないかということ。これは少し前からの私の仮説(というほどではないが)なのだが、70-80年代の政治のゴタゴタを確認して改めてそう感じた。そして高度成長が辛うじて残した「遺産」(豊かさという意味でも教訓という意味でも)すら、見えなくなりつつあるのが現在なのではなかろうか。だとすれば、現在を語ろうとすれば高度成長の総括から始めなければいけないのだと思う。