『空爆の歴史』荒井信一(岩波新書)

空爆の歴史―終わらない大量虐殺 (岩波新書)
荒井 信一
岩波書店
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空爆とはそもそも「後方」の町を破壊し住民を殺すものであって、「誤爆」なのではないということを歴史を通じて明らかにしている。空爆の背景にあるのは、植民地主義=<文明/野蛮>の論理であって、空爆の問題は細菌兵器の問題などと絡み合って存在している。そしてその論理は原爆にまでつながっている。東京裁判などの戦争裁判は、ダブルスタンダードによって空爆の非人道性を隠蔽し、そこでは連合国も日独も加害者として共犯関係にあった。とはいえ欧米圏ではそのことの反省も始まっているのに、日本では戦争責任と向き合えなかったがゆえに、空襲被害の問題性を公的に共有できなかったのではないか。というような内容で、教えられることの多い本だった。