『バイバイ、エンジェル』笠井潔(創元推理文庫)

バイバイ、エンジェル (創元推理文庫)
笠井 潔
東京創元社
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大部分は風呂読書。続きが気になるという点では面白い本だったと思う。しかし、種明かしの段階になって突然「謎の組織」の存在が明らかになるのはいかがなものかと思うし、最後の観念問答は邪魔(しかし不要な部分こそ著者が一番言いたいことだったりするわけだが)。そもそも「現象学的推理」の時点で笑える上、実際の推理と矛盾している。男性作家が女性になったつもりで「内面」を描く文章のむずむずした感じが気になったわけだが、一方で矢吹駆は万能かつモテモテで、ここに作者のフランス体験が反映しているのだろうか(笑)。フランス体験といえば、連合赤軍の問題を考えるのにこの小説を書いたようなことを言っているが、当時ヨーロッパでも「極左」の活動は続いていたわけで、舞台をフランスにしながらその点のリアリティに乏しい零か百かの観念論しか書けてないのはなぜだろうか。著者の理解力がその程度だったという答えもありうるが、本当に「革命運動」をすべて諦めてフランスに渡ったのかどうか、邪推したくもなる。