『「格差」の戦後史』橋本健二(河出ブックス)

前半までの感想として、「格差」についてのデータにエピソードをまぶす程度の本か、と正直に言って思った(笑)。しかし通して最後まで読むと、通史として書かれる「必然性」とでも言うべきものが感じられた。もとより限られた頁数の一般書なので、食い足りない印象も残るのは仕方ない。おそらく、「貧困・格差」問題が軽視されたことの社会科学史的整理や、この「格差の戦後史」が理論的には何を意味するのか(社会構造の国際比較?)といった点はまだ詰める余地があるということだろう。とはいえバランスのとれた便利な一冊だと思われる。