『畏怖する近代』左古輝人(法政大学出版局)

畏怖する近代―社会学入門
左古 輝人
法政大学出版局
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この著者の名を最初に知ったのは、建部遯吾についての論文であったため、「変な研究者に違いない」と思い込んでいた(笑)。しかし本書は、「変」どころか王道な「近代」についての入門書で、私にとって納得のいく「社会学入門」だった。資本制と主権国家を「二大フォーマット」として軸に据えて近代と社会学を説明するのは、骨太で、実はわかりやすいのだと思う。とはいえ、いくつか疑問もある。たとえば「二大フォーマット」を軸にするのは良いとしても、それらの「陰謀論」風の記述に見えるところがいくつかある。家族の機能縮小についても、マルフェミな人ならば「資本制による家族機能の代替」という図式は描かないだろう。あるいは最後の、宋代の「社会」の語義についての検討は、現在の「社会」を考えるヒントにはなってもそれ以上ではないのであって、非日常=社会というのはちょっと強引だと思った。