『吉本隆明のDNA』藤生京子(朝日新聞出版)

吉本隆明のDNA
吉本隆明のDNA
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藤生 京子
朝日新聞出版
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予想以上に面白かった。つまり、吉本ファンというのがいかに勝手に吉本を「理解」しているのかというのがよくわかる本。詩や人生論としてならばそれはそれで「正解」かもしれないが、社会科学的な関心の場合は結構致命的という気もする。不思議なのは、この著者(インタビュアー)が、インタビュイーの著作をよく読んでそれらを広範に引用していて、そういう意味でインタビューとして最低限のラインはクリアしている上、吉本からの引用も幅広く行なっていてその点でもよく読んでいると思われる(ちなみに私は吉本をあまり読んでいない)。しかも、各人の勝手な吉本解釈については巧みにそれが「誤解」であることを滲ませていて、それなりに吉本の主張を「理解」しているようにも思われる。だとすると吉本に対する著者なりの見解があっても良さそうなのだが、これがなんとも「中立的」でほぼ出てこない。それが不思議な印象を与えている。