『市民社会とは何か』植村邦彦(平凡社新書)

実に面白かった。これまで「市民」とか「市民社会」を理想とする議論に対して不審な気持ちを抱き続けてきたが、こちらの教養が足りず十分に説明しきれなかった。この本を読んで霧は晴れた。日本での文脈も議論していて、まさに「基本概念の系譜」の説明になっている。特に、市民団体さえ増加すれば良いかのような議論(「アソシエーション革命」論)とか国家の問題を吹っ飛ばして「市民社会」の可能性を語る議論への終盤での批判には全面的に賛同したい。現実の変革主体の形成やその回路についての議論を脇に置いて「市民社会」を結論に持ってきて万事片付けるような安直な議論、いい加減もうやめようよ。