『〈主体〉のゆくえ』小林敏明(講談社選書メチエ)

戦後の部分に興味があって読み始めたのだが、むしろ京都学派における「主体」の展開の部分が充実していて、戦後はやや大雑把だった印象。西田哲学については少し前に概説書を齧っていたため懐かしい感じで復習できたが(というかほとんど忘れていたけど)、そのときもこの著者の説明は大変わかりやすくて助かった記憶がある。ともかく、全然別の用件で読み始めたにもかかわらず、自分の博論の問題関心の「底部」に深く関わっていることを発見できたのは何よりの収穫だった。つまり、社会運動における「自発性」というのが自分の本当のテーマなのだということ。それはいわゆる「主体的」であるという態度の評価とも直結している。そしてその問題関心は、「社会学」にとっても核心的なものなのではないか。実はまだちゃんとしたオチはみつかってないのだが(笑)、このあたりまで考えが展開できたので、その意味でもありがたい一冊だった。