『組織の存立構造論と両義性論』舩橋晴俊(東信堂)

これまで「社会学理論」なるものについてろくに考えたことがないので(笑)、三水準の理論の設定や「T字型の研究戦略」など、「それはそうだ」と簡単に腑に落ちて、それなりに頭の中を整理するのに有益だった。しかし「三水準」というからには、その三つそれぞれについて一通りは具体的に説明してもらいたいのだが、中範囲の理論の具体的論考が本書にはなく、その点で、この原理論と基礎理論は本当に有益なのだろうかと疑問が生じる。もちろん著者としてはこれまでさんざん実証的研究をやってきて、どちらかというと実証研究側から基礎理論に辿り着いたと言いたいのかもしれないが、そうなると今度は原理論たる存立構造論と基礎理論たる両義性論が本当に言うほど接着できているのか、という疑問も湧く。しかも、両義性論もそうだが、原理論も、語られざる経験的な前提がいくつも入りこんでいるように思えて、抽象的水準の純粋さを欠くというか、端的に言って、ここまで強調するほどに有益な視座なのかどうか、この本だけ読んでもあまり説得されない(だから中範囲の理論までセットにして提示して欲しかった)。というわけで、本書が大絶賛するほど存立構造論のありがたみに納得できなかったのだが(社会主義のパラドクスという問題への熱意はよくわかったけれど)、そうは言いながらも自分自身の問題関心が「社会学的」に外れてはいないことを示唆された気もして、実は結構啓発的だった。こういう領域もちゃんと読めということなのだろう。