『主体と戦線』武藤一羊(合同出版)

過去や現在の分析はどうしてこんなに明晰なんだろう、というくらい(表現も含めて)シャープ。ところがそこから展望を述べる段になると、なんとも漠然とした話にしかならない。そのギャップは興味深い。おそらくマルクス主義の「安心感」が、展望の曖昧さへの自覚を阻んでいるのではないか。改めていろいろ考えさせられた。