『官僚制批判の論理と心理』野口雅弘(中公新書)

現在「組織」についてあれこれ考えている身としては、いくつかヒントを得ることができて面白く読んだ。しかし普通に一冊の本としての完成度で言えば、写真が出てるのに数行言及されるだけの思想家とか、ちょっと詰め込みすぎの印象(というより新書としても薄くて展開不足)。しかも「思想史」の問題としての官僚制と、世の中で流布している「官僚制」論と、現実の「官僚制」(行政)と、これらが同一物として論じられている気がして、明らかにおかしいと感じた点はなかったけれど、本当にこうなのだろうかと感じてしまう。いろいろ人名や理論が挙がる割には、図式としてはシンプルで、秩序対自由というか、割と二項対立的。その両者の矛盾に耐えよ、というのはわかるけど、理論的に腑に落ちた気はしない。