『不安家族』大島寧子(日本経済新聞出版社)

この間の格差貧困問題の総まとめという感じで、特別新しい論点はなかったと思うけれど、それらを対策を含めて全部グラフ付きで再確認してくれていて、とても便利な本。私自身は消費税増税には反対であるし、本書の「そこまでは無理だろう」という判断があまりに「現実的」過ぎて、それらについては賛同できない部分も多いが、分析の基本的な内容には異論がない。その意味で読んでいて暗い気分になってくる。本書を踏まえた上で現実の消費税増税論にますます賛成できないのは、現役世代への社会保障が手薄なまま、しかも逆進性の緩和策もろくにない状態で消費税をまず上げようとしていて、それは経済活性化の気運もないまま消費に冷水をかける行為ではないかと危惧する。仮に著者の方策(消費税増税を含む)を全て実現するにしても、相続税所得税の課税強化と現役世代への支援策のセットこそ先行させるべきなのではないだろうか。