『原発事故はなぜくりかえすのか』高木仁三郎(岩波新書)

原発事故はなぜくりかえすのか (岩波新書)
高木 仁三郎
岩波書店
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寝る前に一気に読む。「原子力安全文化」というスローガンを足がかりにして、そもそも原子力業界に「文化」などあったのかという点から論じていく。著者は「文化などなかった」という主張ではあるが、結果として、否定的な意味での(たとえば議論しないとか、反省しないとか)「文化」を明らかにしており、それが「原発事故」を繰り返す土壌となっていることを読者に伝えている。もっと具体的な話が読みたいとは思ったし、「日本人論」に流れるのも安易ではあるが、著者の試み自体は「成功」しているのではないか。私も原発に反対ではあったし、高木仁三郎の存在ももちろん知ってはいたけれど、そのために格別の行動はしなかったわけで、それが今につながってしまったのだということを改めて思わされた。ちなみに化学者の立場から「物理屋」の批判をしていて、それは自分にとって経験の薄い領域だけに、興味深く読んだ。