『風評被害』関谷直也(光文社新書)

風評被害 そのメカニズムを考える (光文社新書)
関谷直也
光文社 (2011-05-17)
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あとがきを読むと、著者なりに地道な研究を重ねてたまたま「現在」の話題とかぶったということで、悪くない姿勢なのだとは思うが、「タイムリーな新書」として頭から読むと、「風評被害」についてそれほど知見が増える感じがしないというか、何かが解明されている議論とはなっていないので、もどかしい印象を受ける。特に原発問題という入り口から本書を読むと、「中立的」な言い方が目について(後ろの章はそうでもないが)、著者本人にその気はないとしても「日本広報学会賞」をもらえてしまうスタンスだというのも腑に落ちる。「風評被害」という用語自体が原子力問題から生じたという話は興味深かったので、今回の新書から落としたという「原子力安全神話の形成過程」の方をちゃんと読んでみたい。