『査問』川上徹(筑摩書房)

査問
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川上 徹
筑摩書房
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概要も聞いてたしずっと積読だったが機会があったので読了。自分には何も「党経験」はないが、共産党の体質からして既知のことではあった。しかし実際に読んでみると思ったより不快な追体験だった。こんなことをしでかす集団が不快だし、為す術もなく従う人たちの態度もまた。脱出をはかったり最初から「反抗」する人たちの方に人間味を感じる。なんというか、あまりに「周回遅れ」なところに驚きもある。とはいえ、自分自身、大変官僚主義的な人間だという自覚もあるので、「査問する側」になったら同じようなことをする気がするし、「される側」だとしてもどこで有効に自己防衛できるか、自信があるわけでもない。結局組織というのは、理念・理論であれ命令系統であれ、最低限のところでは人間関係で成り立っているのに、それを「利用」しながら破壊するというところに不快感の源泉があるような気がする。だから逆に言うと、そういう日常的な人間関係の基本への破壊行為を、組織の論理でしてはならないし、もしそうされたらそのような集団とは積極的に縁を切るという習慣(反射神経)を身につけなくてはならないのだろう。しかし、私自身の関心からすれば、単なる日常生活の延長でないところに社会運動組織の意義もあるのだと思っている。だから日常性からの離脱は、この問題とは違う平面で探さねばならないのかもしれない。