『新しい左翼入門』松尾匡(講談社現代新書)

最初はてっきり、〈「新しい左翼」入門〉として、社会変革についての新しい見方を示してくれるのかと思ったら、〈新しい「左翼入門」〉という感じで、日本のマルクス主義史の整理本だった。新書らしくわかりやすいし、復習するにも良かった。というか、昔かじったのは戦前共産党中心の歴史だったので、労農派についてちゃんとフォローできてないことと、1930年代後半以降について理解があやふやになっているという自分の偏りも理解できた。ただ、「こんな話でいいんだろうか」と素朴に疑問に思う箇所もあり、自分で勉強し直すのに参考文献をちゃんとつけて欲しかった(運動史研究者としてはもっと厳しい見方をする必要があるのではないかとも思うが、勉強不足なのでこの程度しか言えず…)。そもそもの分析の中身で言えば、全体を貫く二項対立が、原理的に言うとどういう二項なのかちょっと納得いかない点があり、全てをこの二つでまとめるのも強引。そしてその二つをうまく使い分けるという提言もイマイチ。というか、左翼運動史が単なる組織経営論に収斂していくのは(私も似たような筋を考えているので間違いとはいえないけれど)、なにかスケールが違いすぎるのではないか。つまり、著者の「専門」であるらしいオチの部分はしょぼい印象。