『日本沈没 下』小松左京(双葉社)

途中で読み止まっていたのを何となく再開して読み終わる。小説として確かな筆力だと思うし、当時読んだら荒唐無稽に感じたかもしれなくても、3・11以降には「それも起こりうる」というリアリティがあって、よくここまでシミュレートできたなと感心する。地震の宏観現象なども幅広く取り入れられていて面白い。しかし、今の時点だから言える筆者が見えていなかったこととして、原発は制御不能になるのだということ(終わり近くに東海原発について言及があるが、地震津波が稼働中の原発を襲う話は全然出てこない)と、危機に陥った国で憂国のエリートなど出てこなかったということ(笑)。また、既に読者には常識だったかもしれないが、この『日本沈没』が本来は導入部に過ぎなかったという話を初めて知り、頭の使い方が突拍子もないというか、意外な感じを受けた。