『グローバル時代のアジア地域統合』羽場久美子(岩波ブックレット)

地域統合は必要、むしろ乗り遅れるのはまずい、という主張は明快だが、「地域統合」とは具体的には何がなされるのか、そのことの弊害は何かといったことはほとんど議論されず。しかも、「日米安保か中国従属かという二者択一は良くない」という一般論は良いとしても、「政治」抜きの経済統合がうまくいく保証もなければ、アメリカがヘゲモニーを余計な行使しない保証もなく、結局、対等で自律的な地域統合をすべしというのは単なる理想論ではないのか(その立場から一応TPP慎重論らしいが)。経済のためには歴史和解も推進すべし、という議論も必ずしも悪いわけではないけれど、現在の日中関係を見ても、歴史を単純化した楽観論にしか見えないわけで。