『金曜官邸前抗議』野間易通(河出書房新社)

私が敬意を持つ周囲の社会運動関係者の多くは、この官邸前抗議に批判的で、その指摘はそれぞれもっともだと思っている。しかし同時に、それらを聞いてなお、この抗議はこれ以外にやりようがなかったのではないか、現段階で最高の成果なのではないか、とも私自身は思ってしまう。いわば心情支持派とでも言うべき曖昧な私の感覚は、たぶん自分が「主体」となってこの間の反原発運動に関わっていない(一参加者・一協力者に過ぎない)ことに起因しているのだと思う。ともかく、そういう曖昧な立場からの評価ではあるが、良書だと思った。単なる個人的体験だけでなく、関係者に「取材」し時系列を整理して説明しているのが有益だし、現場の「混乱」具合など、内側からの説明を聞いて(批判された点も含めて)ようやく理解できた点も多かった。もちろんこの著者の議論に全て賛同できるわけではなく、運動の原理の問題と支持を集める手段の問題は両方重視しなければならないと考えるから「日の丸」問題など到底納得できないし(そもそも、「非国民」は暴力で排除しても構わないと思っているような「右翼」と共闘することは「寛容」ではないだろう)、上げ潮局面であれば「実務集団」でもなんとかなるのだろうが、今後後退局面が続けばそれだけでは続かないだろう。とはいえ、時間内に抗議行動を終わらせることへのこだわりなど、ヒントを与えてくれる肯定的な材料はあるし、どんな立場であれ、議論のベースとしてまずこの本に目を通すことは有益なのではないか。