『ネットワーク組織論』朴容寛(ミネルヴァ書房)

韓国語ネイティブの著者が、英語はもちろん日本語で書かれたり訳された大量のネットワーク論・組織論の文献を読んでまとめ、しかもそれを日本語でこれほどの分量を書いたというのは、外国語が苦手な私としては率直にすごいと思う。博論本体を削って本書に整えたそうだから、元はこれより長く書いたわけで、その点は感嘆する。しかし、内容的に言うと、既存の議論を並列的に紹介したという以上の意味がよくわからない。一応、「目的活動的組織からコミュニケーション的組織へ」という著者の図式はあるのだが、それは単なる願望というか、よくあるイメージを再確認したという以上の説得力は感じられない。「ネットワーク組織論」が重要になるに至る理論展開の社会思想史的な分析が深められるというほどでもなく、現実に組織がそう変貌を遂げることの社会史的必然性が明らかにされているというほどでもなく、また実際にそうした趨勢があることも確認されているというほどでもない。さまざまな事実や議論が、「ネットワーク組織」へと向かっているというイメージと整合的な形でなんとなく配列されているだけなので(個々のエピソードには刺激的なものもあるが)、そのイメージは「思い込み」に過ぎないのではないかという立場から批判的に読むとあまりに無防備で、既存文献のまとめという以上に得るものがないように思う。