『大貧困社会』駒村康平(角川SSC新書)

この間の「格差・貧困社会」論の総まとめといった感じで便利。現状に暗澹たる気分になる。ただ、次から次へと整理し対策を出しているため、その処方箋でベストなのかどうか吟味している余裕がない。たとえば年金問題など、まだ「正しい考え方」を学んでいないので強い異論というわけではないが、どうせ強制的に徴収されるなら「税方式」の方がいろいろスッキリして良いように思えてしまう。「社会保険」にこだわる理由がいつもよくわからなくて、最低限の生活保障として必要な一階部分を税方式でそれなりに手厚くしたら、二階部分は積み立てであれ保険であれ「自由化」してしまえばいいのではないだろうか。企業負担にしても、継続的な雇用を前提とした制度は煩雑なだけだろう。平凡な一日を過す権利は保障されるべきだが、税金を関与させて「優雅な老後」まで保証する必要はないと思う。そうは言っても不安が残るというのは、医療にしても住宅補助にしても全世代に対する福祉が貧弱だからだろう。もちろん福祉を充実させるためには税金が必要で、消費税を含め全体の税率が上るのはやむをえないが、取るべきところからより多く取るということは前提。