『無根のナショナリズムを超えて』鶴見俊輔+加々美光行編(日本評論社)

研究会の文献として読む。松本健一みたいな発言が可能だという時点で竹内好ブームは警戒して然るべきだが、加々美のようにそれには反発する人も「無根のナショナリズム」への対抗上「有根のナショナリズム」は良いものであるかのように語る。つまり竹内好は日本における「良いナショナリズム」論の思想的資源となっているわけで、最近の流行を歓迎できるはずもない。鶴見俊輔ナショナリズムの区別も以前からの主張ではあるが、明治維新は国家建設なのだから、これを「有根のナショナリズム」と位置づける時点で破綻している(その程度であれば国家だって常にある程度は「有根」だろう)。孫歌に代表される「文学」論も含めて、竹内好再考/再読の流れにはある種気持ちの悪さを感じてしまう。