『東大全共闘から神経病理学へ』岸江孝男+土谷邦秋編(明文書房)

東大全共闘から神経病理学へ

明文書房
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タイトルは変だが、中身はもっと変。最初にインタビューを受けている人(土谷)が一番全共闘運動と自分の人生に有機的連関がなく、何も考えてない感じで、読んでいて腹がたったのだが、実はこの人(の母親)がスポンサーで、もともと彼の人生を振り返る本として企画されたらしい(なのでこんなタイトルになった)。よほど寛容なのかそれとも無頓着なのか。一方で、自分以外の三人に対してインタビュアーとして登場する岸江という人は、ブルジョワ民主主義者として駒場全共闘に参加したという自称「右翼」。それなのに(あるいは「だから」)現在の状況に対して一番憤りを感じていて、全共闘の意義についてもインタビュイーに対してガンガン問い詰めていて、読んでいて共感が持てる箇所が多い。しかしその当人の担当章はなぜか脳のシナプスの話とか好き勝手な方向に話が逸れていって、ろくに全共闘の話になっていないし、自分を省みる話にもなっていない。わけがわからない。この手の当事者世代による回想録あるいは「総括」本というのは、もっと当時の話に特化してくれた方がありがたい場合が多い。だらだらした「思い出」や自慢話をされても困るのだが、中途半端な現状分析や政治談義をされても読むのに疲れる。しかし「総括」しようという問題意識を持っている人に限って現状に対していろいろ言いたいことがあるもんだから、なかなか適切なバランスにならない。実は難題。