『私物国家』広瀬隆(知恵の森文庫)

私物国家―日本の黒幕の系図 (知恵の森文庫)
広瀬 隆
光文社
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「自炊」したので電子端末でさらさら読む。人名が次々に出てきて覚え切れないし(笑)、誰と誰がつながっているというだけでは状況証拠にしかならない。実際に当事者からすれば大した「謀議」はしていないと思っているかもしれない。それでも「閨閥」としてこれだけつながっていたというのは興味深いし、事件報道でそういう背後関係を無視するのはジャーナリズムの怠慢ではないかと思った。今はデータベースを簡単に用意できるのだから、新聞社とかには頑張って欲しいのだが。本書は汚職事件の系譜をたどりながら最後に原子力の問題にたどり着くが、著者の実際の手順としても、現在の原発事故後の論点としても、逆順にたどったほうがわかりやすいだろう。つまり「原子力ムラ」の利権問題は日本全体を腐敗させている病巣の一部であり、原発問題「すら」政治家やマスコミがまともに改善できないことの背景には、より大きな腐敗が広がっているということであろう。それらを一度全て切開できなければ状況は悪化する一方ではなかろうか。「私物国家」というタイトルは全くその通りだと感じる。